起業を「趣味」で終わらせないために真っ先に検討すべきこととは?【PAM理論】™④
こんにちは、鉾立です。
前回の記事、「起業をギャンブルにせず、安全にスタートさせる方法【PAM理論】™③」では、
- 起業家にとって「情熱」は不可欠なものだけど、その情熱を担保する「能力」がないと、ただの理想、妄想、机上の空論で終わってしまうこと
- 自分の「能力」を棚卸しし、自覚することによって、あなただけのオンリーワンの領域が生まれる可能性が高まり、また顧客にとって特別な存在になることで、競合他社の少ない領域・ポジションで事業をスタートすることができること
- 自分の「能力」を知るための3つの質問
についてお伝えしました。
今回は、【PAM理論】™の肝となる 「市場(Market)」について、例によって私のケースも交えながら詳しくお伝えしたいと思います。
ところで、、、
あなたは事業は成り立つのか?
前回までの記事を読んだ賢明なあなたなら、自分の「情熱の源泉を言語化」し、また自分の「能力の棚卸し」を行われたことと思います。
情熱があって、それを裏付ける能力もある。
でも、そもそもあなたの商品・サービスを必要とするお客さんたちがいなかったとしたら?
事業は成り立ちませんよね。これでは単なる「趣味」で終わってしまいます。
ここで簡単なエクササイズをしてみましょう。
あなたの事業を想定して、次の練習問題を解いてみてください。
【練習問題】
ステップ❶ 組織運営に必要なコストを算出する。
ステップ❷ 製品単位ごとの粗利益を計算する。
ステップ❸ ステップ❶の結果をステップ❷の結果で割る。
ステップ❹ 何人かの女性にその製品がそれだけ売れそうか訊いてみよ。答えがノーならビジネスモデルは失格である。
この練習問題は、アップルコンピュータのエバンジェリストとして知られ、全米屈指のベンチャー・キャピタリストであるガイ・カワサキの著書『完全網羅 起業成功マニュアル』に紹介されているものです。(ブログ記事「あなたの核になる事業は?【PAM理論】™①」で、私が会社設立の相談に見えた方に手渡した本です。)
少し解説しますね。
ステップ❶の「組織運営に必要なコスト」とは、自分の給料やスタッフの給料、家賃、光熱費など、毎月固定的にかかるコストのことです。
仮に、「組織運営に必要なコスト」に毎月60万円かかるとしましょう。
ステップ❷の「製品単位ごとの粗利益」とは、一つの商品・サービスが売れたとして、その売上げから仕入れを差し引いた後の利益のことです。
仮に、一つの商品が2万円で売れたとして、仕入れに1万円かかったのであれば、差し引き1万円が粗利益ですね。
続いてステップ❸の計算をしてみましょう。
60万円 ÷ 1万円 = 60個
すなわち、毎月60万円のコストを支払うためには、最低でも毎月60個の商品を売る必要があるということです。
最後にステップ❹。
- その商品は毎月60個以上売れそうか?
- お金を出して買ってくれるお客さんが毎月60人以上いるか?
- それだけの市場(マーケット)があるか?
と、見込み客や信頼の置けるアドバイザーに訊きなさい、ということです。(本書によると、「男性より女性のほうが(遺伝子的に)良識にすぐれている」から「女性に訊け」とのこと)
もちろん、複数の商品・サービス展開があったり、価格の設定の仕方など、条件によって数字は変わりますが、この簡単な計算をした時点で「これでは事業として成り立たないかも、、」と気づく方が多くいます。
なお、一般的に、扱うものが低額商品・サービスの場合、高額商品・サービスとくらべて、同じ利益を得るために必要となる客数が単純に増えるため、オペレーションコスト(時間と労力)が増加し、事業の難易度が上がります。(大きな資本や洗練されたシステムが必要となるなど)
「情熱」と「能力」と「市場」。
この3つの円が重なる領域で勝負することで、事業成功の精度を高め、立ち上げた事業を「最短距離」で軌道に乗せることが可能になるのです。
あなたの市場(Market)を決めるための3つの質問
では、あなたはどこの「市場」で勝負しますか?
市場とは、あなたや競合他社の商品・サービスを購入することによって問題を解決することができるお客さんたちの集まりを指します。
例えば外食をする場合、
- 最近、食事に気を使うようになってさ。糖質が少なめのヘルシーなランチを手頃な値段で食べれるお店ってないかな?
- 今日はリラックスしながら本でも読みたい気分だわ。一人でふらっと立ち寄れるアルコールと軽いつまみのあるカフェって近くにないかな?
というように、人は何かしらの問題を解決するために商品・サービスを購入します。(ちなみに上の例は私が今考えていたことです)
あなたは、自分の事業を通じて、「誰」の「どんな問題」を解決するのでしょうか?
前述の通り、どこを市場にするか決めることは、あなたの事業戦略上、とても重要な選択となります。
「そう言われてみると、お客さんのことについては漠然としか考えていなかったかも、、、」
そんなあなたに、自分の市場を決めるためのヒントになるのが次の3つの質問です。
ぜひ紙に書いて、あなたが勝負する市場を検討してみてください。
1.あなたのお客さんは誰?
マーケティングには、「ペルソナ」という概念があります。
ペルソナ (マーケティング手法)
企業が提供する製品・サービスのもっとも重要で象徴的なユーザモデルのこと。
そのモデルを作ることをペルソナデザインという。
あなたの商品・サービスを購入するもっとも理想的で象徴的なお客さんは誰なのか?
すなわちペルソナを設定することは、あなたの市場を決めるうえで、とても重要なプロセスになります。
ペルソナを設定することで、事業のコンセプトが定まり、商品・サービスを打ち出す際のメッセージが明確になるのです。
では質問です。
- あなたのお客さんは誰ですか?(具体的なお客さんの名前は?)
- あなたが手助けしたいと強く思う人はどんな人ですか?
- あなたが関わっていきたいと強く思う人はどんな人ですか?
あなたにとって理想的で象徴的なお客さんを一から想像してみてもいいですし、具体的に実在する人物をペルソナに設定しても構いません。
私の場合は、例えば、
- リスクとロマンを体現する企業経営者という人種が大好き。企業再生コンサルティング会社勤務時代のクライアントだった株式会社○○の○○社長が、事業承継アドバイザリーサービスのペルソナ
- 顧問税理士に次いで、企業経営者の良き相談相手になっている地域金融機関。専門家を活用して顧客サービスの向上と業績アップを実現している○○信用金庫の○○次長が、法務・税務の専門家サービスのペルソナ
- すべて包み隠さず話してもらうことで初めて適切な提案ができるもの。なんでも話してくれた○○区の○○さんが、財産コンサルティングサービスのペルソナ
という具合です。
ちなみに、ペルソナを絞り込むと市場が小さくなると思われがちですが、的(まと)が絞られることでコンセプトとメッセージが明確になり、結果として的(まと)の周辺のお客さんにも影響力が波及するという現象が起きます。
では、あなたの場合は?
2.あなたのお客さんはどんな問題を抱えている?
ペルソナを設定した後は、そのペルソナが具体的にどのような問題、悩み、欲求を持っているのかを特定します。
ここで一番間違いがないのは、やはり顧客や見込み客に実際に話を聞いてみることでしょう。
あなたに既存のお客さんがいるのであれば、実際にお金を払ってあなたの商品・サービスを購入した「顧客」に対し、アンケートやインタビューを通じて聞いてみるのがベストです。
次に、お金を払う可能性がある「見込み客」に聞いてみる。
更には、今の時代はインターネットサイトでこれらのリサーチも可能です。
※質問と回答 (Q&A)サイトおすすめ一覧 – NAVER まとめ
私の場合は、企業再生コンサルティング会社勤務時代に顧客165人の相談・受託案件に対応する中で、
- 「身近に相談できる人がいない・・・」
- 「知り合いに相談したり、無料相談会に行ってみたけど満足な回答が得られない・・・」
- 「自分で調べてみたけど、これからどうやって進めていいのかわからない・・・」
という3つの悩みにクライアントの悩みが集約されることに気づきました。
では、あなたの場合は?
3.そこに市場はあるのか?競合は誰なのか?
これが最後の質問です。
あなたのお客さん(ペルソナ)は、あなたの商品・サービスを購入する前は、どうやって問題、悩み、欲求を解消していたのでしょうか?
この質問の意図は、
- その市場は潜在的な市場なのか?顕在的な市場なのか?を知る
- その市場の競合(ライバル)は誰なのかを知る
ことにあります。
あなたの商品・サービスを購入する前では、お客さんが問題、悩み、欲求を解消できていなかった「潜在的な市場」であれば、収益化に時間がかかるかもしれませんが、その分競合も少なく、あなたが独自のポジションを取れる市場となる可能性があります。
逆に、あなたの商品・サービスを購入する前から、お客さんが問題、悩み、欲求を解消していた「顕在的な市場」であれば、既にビジネスモデルが確立されているため、競合(ライバル)がひしめく厳しい市場である可能性があります。
ちなみに今の時代は市場の成熟化とIT化が進み、これまであった市場が無くなってしまったり、逆に新たに生まれたり、あるいは、お客さん自身が競合(ライバル)に成り代わることも珍しくありません。
変化の速い時代だからこそ、起業家なら、この質問に真摯に向き合う必要があるでしょう。
市場の大きさは、ある意味、お客さんの抱える問題、悩み、欲求の大きさによって決まります。
その意味では、お客さんの抱える問題、悩み、欲求が小さい市場は参入するリスクが大きいでしょう。
もっとも、小さい市場であっても、需要に比べて供給側が少なければ(すなわちニッチであれば)参入する価値があるかもしれません。
私の場合は、
- 「会社経営と個人の財産は一体」との現実に向き合う事業承継を控えた中小企業経営者のために、経営アドバイザリーサービスと財産コンサルティングサービスをトータルなサービスとして提供
- 都市銀行との差別化のため顧客への相談業務に取り組んでいるが、専門家としてのアドバイスまでは行えないという地域金融機関のために、顧客相談対応の引出しを増やし、融資等のビジネスチャンスにつながる、法務・税務の専門家サービスを提供
- 身内間で不動産を売買したいが、いったい誰に相談していいかわからない方のために、不動産の価格の設定のほか資金調達、契約書作成、名義変更までをサポートする財産コンサルティングサービスを提供(親族間での不動産売買手続きのポイント)
など、どちらかというと「潜在的な市場」を選択し、開拓してきました。
では、あなたの場合は?
この「市場」についての検討は、【PAM理論】™の肝になります。
ぜひ徹底的にリサーチして、時間をかけながらこれらの質問の答えを紙に書いてあなたの市場を検討してみてください。
そして冒頭の【練習問題】を繰り返し解いてみてください。
次回は、【PAM理論】™を最大限に活用するためのまとめをお伝えします。
どうぞお楽しみに!
鉾立 栄一朗
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