【書籍紹介】スモールビジネスにも有用。稲盛和夫氏の『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』
今回ご紹介する書籍は、今年8月に逝去された、京セラ創業者・稲森和夫氏の書籍、『経営12カ条 経営者として貫くべきこと』。
10年ほど前に、氏の代表的な著書、『生き方』を読んだとき、
人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力
という方程式を知って、いたく感銘を受けたことがありました。
今回、氏の遺作として本書が刊行されたとあって手に取った次第です。
氏といえば、京セラとKDDI(旧第二電電)の創業や、日本航空の再建といった大企業の経営者というイメージがありますが、本書は、途中で「屋台のうどん屋」のエピソードが出てくるように、我々スモールビジネス・オーナーにとっても有用な内容だと思います。
さっそく、私が気になった箇所を紹介しますね。
私は京セラを創業して以来ずっと、1年間だけの経営計画を立ててきました。
3年先や5年先は正確に予想できませんが、1年先のことなら、そう狂わずに読み切ることができます。
そして、その1年間の経営計画を何が何でも達成するように努めてきたのです。
「今日1日を一生懸命に働くことで明日が見えてくる。今月1カ月を一生懸命働くことで来月が見えてくる。そして、今年1年を一生懸命働くことで来年が見えてくる」
そういうふうに考えて、日々の目標や月々の目標を、そして年間の目標を着実に達成するために懸命に努力を重ねてきました。
銀行融資を受ける際、一般的には、3年~5年の経営計画(事業計画)の作成を求められます。
また、上場企業のIR活動などで作成する中期経営計画(中計)も3年~5年が一般的。
ところが氏は、創業以来、ずっと「1年間だけの経営計画」を立ててきたそうです。
その理由は、3年先や5年先は正確に予想できないから。
歴史を振り返れば、過去にも経営に大きな影響が出たような大災害や、リーマンショックなどの世界的な金融危機が度々起こっています。
そんな外部環境にあっても、京セラはブレずに「1年間だけの経営計画」を何が何でも達成するように努めてきた結果、一度も赤字に転落することなく黒字経営を続けているとのこと。
特に近年は、コロナによって急速なデジタル化が進むなど、本当に数年先が読めない時代になってきていると思います。
ビジョンは大きく掲げながら、「1年間だけの経営計画」を立てて、地道にコツコツと確実に達成していく。
今こそ、そんな、「理想と現実のバランス」が求められる時代なのだと思います。
私は営業に、「競争のない新製品は、原価プラス適正利益ではなく、その製品が持っている価値で売ろう」と言いました。
「私たちが開発した製品は、材料費から加工賃まで含めてこれくらいの原価だが、この製品にはそれ以上の価値があるはずだ。製品の価値は、お客様がそれを使って、どのくらい付加価値を生み出せるかで決まる。この製品は大きな付加価値を生み出すから、その価格で売ろうではないか」。
製造業に限らず、今も多くの企業が、「原価プラス適正利益」で価格設定をしていると思います。
ところが、京セラでは長らく、競争のない新製品については「その製品が持っている価値で売る」ことを実践しているとのこと。
以前このブログで紹介した『「価格上昇」時代のマーケティング なぜ、あの会社は値上げをしても売れ続けるのか』/小阪裕司(著)に書かれていたように、特にスモールビジネスでは、競争がある製品・サービスであっても、「価値」に着目して価格を設定する方向に舵を切るべきだと私も考えています。
※参考 【書籍紹介】“値付け”と“値上げ”に悩む全経営者の必読書
これは多くの企業が見習わないといけないですね。
他にも、
- 経営における「大義名分」「目的」の大切さ
- なぜ、高収益企業である必要があるのか?
- 高収益企業とする千載一遇のチャンスとは?
といった経営の要諦が、氏が厳選した「経営12カ条」にまとめられています。
エピソードの中にブラックな労働環境の話があったり、スピリチュアルな記述があったりするので、今の時代、違和感を持つ人もいるかもしれませんが、読めばきっと、身が引き締まる思いがするはず。
(私も独立前に、「中村天風」の書籍をよく読んでいました。)
もし「先が見渡せない」と経営に不安を持っていたら、ぜひ手に取ってみてください。
追伸
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鉾立 栄一朗
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